アセットアイデア

マンション建替法とは(メリット、件数など)

マンション建替え円滑化法(マンション建替法、マン建法)とは。メリット、デメリット、課題、問題点、活用件数。等価交換方式との違いなど。東京、大阪など都市部を中心に、事例が少しずつ増えています。住民参加の「建替組合」をつくって計画を進めます。(アセットアイデア)

マンション建替円滑化法とは

2002年施行

マンション建替え円滑化法は2002年に施行されました。正式名称は「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」。一般的には「マンション建替え円滑化法」あるいは「マンション建替法」などと呼ばれます。略して「マン建法」ともいいます。

様々な呼称・略称

  • 「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」
  • 「マンション建替え円滑化法」
  • 「マンション建替法」
  • 「マン建円滑化法」
  • 「マン建法」
  • 「円滑化法」

「組合」が主体

マンション建替え円滑化法に基づく建替えでは、建替え決議に賛成した住民とデベロッパーなどで設置した組合が主体で計画を進めます。

住民の区分所有権を、新マンションの区分所有権に移す計画を組合が作成し、都道府県知事などの認可を受けます。

住民は所有権を手放す必要がなく、計画全体を把握でき意見も言いやすいです。

法律が整備された理由・背景

従来のマンション建替えでは、開発業者が採算が取れないと途中で手を引いたりすることもありました。また、住民自身で資金集めや反対者との所有権移転交渉をしなければならないケースもあり、その場合、住民の立場に法的根拠がないため反対者との交渉がこじれて裁判になったりすることがありました。阪神大震災でも多くの被災建物で建替えが遅れてしまいました。

これらの問題を解消する切り札として制定されたのが、マンション建替え円滑化法です。同法では、決議後のルールを定め、様々な権限を持つ法人「建替組合」を住民が設立できるようにしました。

組合に「売り渡し請求」の権限

組合は反対者に所有権の売り渡しを請求できる権限が与えられました。一方で、反対者は時価での売却が義務付けられました。これによって、権利移転が進めやすくなりました。

等価交換方式との違い

マンション建替え円滑化法が施行される以前は、マンションの建替えといえば「等価交換方式」が主流でした。等価交換方式では、住民が持つマンションの区分所有権をいったん開発業者(デベロッパー)に移し、工事はデベロッパー主体で行われます。

等価交換方式だと、マンション住民は、新たな区分所有権を得る契約をデベロッパーと個々に結ぶ手間がかかります。建設中にデベロッパーが倒産すると土地が返ってこないといったリスクもあります。

マンション建替え円滑化法を利用したほうが、マンション住民の理解を得やすい場合が多いといいます。

実施件数

全国で104件(工事実施中を含む)

国土交通省によると、マンション建替え円滑化法を使った建替え事例は、2019年4月時点で全国に104件です(工事実施中を含む)。

施行当初はあまり利用が進みませんでしたが、2010年代になって、徐々に件数が増えてきました。

マン建法による建替えのデメリットや問題点

マンション建替え円滑化法による建替えを行ううえで、難関になるのが以下の点です。

(1)住民の合意形成が難しい。マンション建替え円滑化法とセットとなる区分所有法が定める「全体の8割以上の賛成」などの条件を超えられない。(区分所有者の5分の4以上の賛成などが必要だという点は、従来からある制度と変わりません。)

(2)建替え費用が多額になるため、都市部などの好立地を除いて工面できない。

(3)知事の認可が必要になるなど、手続きに時間がかかる。(ただし、この点は他の手法を用いた場合でも同様です)

住民同士の合意が大事

マンション建替え円滑化法を利用する際に大事なのは住民同士の合意です。

建替えでなく、大規模修繕で対応するという選択肢もあります。

それでもなぜ建替えをするのかについて、住民同士でしっかり議論していくことが成功のカギを握ると言われます。

推進側は、説明会や広報誌などで建物の現状や決定した事項などを丁寧に伝えることが重要になります。

利用件数をさらに増やすために

また、マンション建替え円滑化法の活用をさらに広げるために、専門家からは以下のような改善策が提案されています。

(1)住民の賛成条件を引き下げる

(2)危険な建物からの退去を促す行政の権限を強化する

また、建替えの合意が難しいのであれば、費用が少なくて済む補修に早急に取り組むことで、大きな地震などによる被害を食い止めることも大事です。

事例

アトラス調布(東京)

マンション建替え円滑化法の活用事例としてよく知られているプロジェクトの一つが、東京都調布市富士見町の「アトラス調布」です。

アトラス調布は1971年に完成した分譲団地でした。「調布富士見町住宅」と呼ばれていました。5階建て計5棟(176戸)を、マンション建替え円滑化法により建替えました。

老朽化で水道漏れ

団地は老朽化しており、水道管の水漏れなどの悩みがありました。このため、当初は大規模修繕を検討していました。ところが費用が想像以上にかかることが判明しました。エレベーターがないことへの不満もあり、建替えに切り替えました。

過去の実績から、事業協力者として「旭化成不動産レジデンス」(東京)を選定。管理組合総会で建替え決議を行った後、旭化成不動産レジデンスと相談の結果、マンション建替え円滑化法を用いることになりました。

増えた部屋の販売で建築費をまかなう

新しいマンションは2015年に完成しました。地上8階地下1階などの2棟計331戸。建替えで増える住戸を販売して、建築費用に充てました。従来からのマンション住民の費用負担はほとんどなかったといいます。

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